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カンヌライオンズ2014 〜今年も凄い利益が出ている


カンヌライオンズの主要なプログラムに"AWARD"がある。これは優れた広告作品を表彰する制度であり、選ばれたいなら、まずお金を支払ってエントリーしなければならない。逆に言えば、どんなに優れた広告であってもエントリーしなければ絶対に表彰されない。
2014年、このエントリーフィーの合計金額が過去最高の2,820万ドル(約28億円)に到達した。世界97カ国から37,427のエントリー(前年比4.4%増)があったようだ。因みに昨年も2,400万ドルで、過去最高記録だった。

  • まず、大きな要因は"Product Design"部門が新設されたこと。
  • 最も稼いだ部門が"Outdoor"。5,660のエントリーを獲得し、350万ドル稼いだ。それに続いたのが"Press"で5,007エントリーを記録し、340万ドルを稼いだ。
  • オンラインやデジタル領域でのブランディングに貢献した作品を表彰する"Cyber"は第3位。3,660エントリーで昨年から39%と大幅アップ。というのも今年からレギュレーションが変更され、Social, Branded Technology ,Branded Gamesが新たに追加された。
  • "PR"は43%アップの1,850エントリー。"Branded Content and Entertainment"は22%アップの1,178エントリーだった。
  • Film(-9%),Press (-12%),Radio (-7%)は揃ってダウンした。
  • エントリーフィーは部門によって異なるが、最も単価の高い部門が"Titanium and Integrated"で1,838ドル。但し、この部門は378エントリーしかなく、694,000ドルしか稼いでいない。よって、何が何でも賞が欲しいならば、この部門を狙うことをお薦めする。
  • 国別のエントリー数を見ると、トップは米国で6,213。次いでブラジルの3,321、ドイツの2,376と続く。一方、今年はアルバニア、ガーナ、サンマリノから初のエントリーがあった。

現在、"AWARD"は17部門あるが、歴史を紐解いてみると92年に"Outdoor""Press"が加わるまでは"Film"のみで、非常に希少であった。その後、02年までに"Media""Cyber""Direct"が追加され、2005年以降に11部門も追加されている。この辺りからカンヌライオンズは「広告からクリエイティビティへ」と言いながら、急速に儲かるイベントになってきた訳だ。ちなみに主催者はInternational Advertising Festival Limitedというロンドン拠点の株式会社。カンヌライオンズだけでも相当な売上規模だが、ホームページすら無い。
部門が増えていることについては賛否があるようで、例えば、今やあらゆるキャンペーンにオンラインやモバイルの要素が不可欠になる中で"Cyber"や"Mobile"が必要か? といった声もある。("Should Cannes Categories Be Canned?""Cannes Do-Over: Is It Time to Rethink Your Overthinking Strategy?")

世界中のクリエーターがこの1年間、制作費を切り詰めて捻出したお金が26億円になった訳ですが、"AWARD"の主な経費は審査費用、各部門各賞に与えられるトロフィ1個分(2個目から有料)程度なのでざっと見積もっても20億以上は利益を生んでいると考えられる。そして、このエントリーの多くが"ソーシャルグッド"作品であるにも関わらず、この20億円の一部がソーシャルグッドに使われる話は今の所聞いていない。
そして、カンヌライオンズの収入はこれ以外にも協賛収入、コンベンション参加料収入がある。コンベンション参加料も地味に150ユーロ値上がりしていた(2710ユーロ/1週間)。仮に10,000人がこのチケットを購入すると38億円の収入(他にも3日券や4日券はあるが話を単純化する為に)。会場費(かなり老朽化)や運営費を差し引いても半分以上は残るだろう。協賛を含めれば40億程度の利益はありそうな感じだ。
最後に、今年のカンヌライオンズのトレーラーです。

主催者である"International Advertising Festival Limited"がどんな会社なのか、利益が何に使われているか...興味あります。
via Adage