来年でデュシャン「Fountain」から100年。トイレ作品がちらほら登場し始める。来年は「レディメイド祭り」になるのかな。
マルセル・デュシャン「Fountain」。
アートとは目前にある美しい作品ではなく、観ている人に解釈され、その人の中で完成するのがアートである、そんなコペルニクス的転回を起こした作品。現代アートのランドマーク的存在です。この作品が生まれたのが1917年。来年が100周年のメモリアルイヤーということで、ここに来て、オマージュ作品が散見される。
マウリツィオ・カッテラン「America」
18K製のこの便器は何とグッゲンハイム美術館(NYC)の公衆トイレ内にある。実際に使用できる「参加型アート」だ。NYCに世界の富が集中することに対する皮肉を示唆する作品だろうか。
本家「Fountain」には「R.Mutt」とサインしてあるが、「Mutt」は衛生器具メーカーの「Mott Works」、「R」はフランス語で「成金」を意味する「Richard」であり、この「金ピカ」は、そのあたりも意識しているように感じる。
ヨシュア・オコン, サンティアゴ・シエラ「The Toilet」
このメタリック鱗状のフォルムは、メキシコシティにある「ソウマヤ美術館」の外観をイメージしている。
この美術館の所蔵品の大部分は2010年から世界長者番付4年連続トップだったメキシコの大富豪「カルロス・スリム」の所有。「The Toilet」は、スリム氏の富の象徴である美術館とトイレという洗練されていないオブジェクトを並置することで無秩序に拡大する貧富の差、資本主義のダークサイドを示唆している。
ダミアン・オルテガ「America Letrina」
「Cosmic Things」など宙に浮く作風で有名なオルテガの作品。直近ではないですが、1997年作品なので「Fountain 80周年」の意味があったのだろう。知人の雑誌のカバー用につくったこの便器は、よく見ると南北米大陸の形状。南米が常にグローバルパワー(全てを飲み込むチカラを持った北米の水タンク)に晒されている、という示唆でしょうか。これもやはり経済格差に関するメッセージを含んだ作品だと思います。
その歴史的文脈を鑑みつつ、新たな可能性にチャレンジするのが現代アートなので、その始祖の1人であるデュシャンを意識した作品が生まれるのは必然。2017年は「レディメイド祭り」になる予感がする。
(via The Creators Project)