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カンヌライオンズはSXSW化する?

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ここ数年、様々な要素を取り込んで急拡大するカンヌライオンズですが、次のターゲットは"SXSW化"すること、つまり、スタートアップが集う場になる...という記事がAdageに出てしました。

その布石として、今年、Unileverが"Foundry50"というプログラムを立ち上げた。これはマーケティングテック系スタートアップ50社をカンヌライオンズに招待し、エージェンシーやメディア、マーケターなどの参加者にプレゼン&交流機会を提供するプログラムで、何と3,000社のエントリーがあったとのこと。

また、R/GAはカンヌライオンズ事務局と組んで"Start-Up Academy"というプログラムを立ち上げている。これは選ばれた10社に対して、専門家がブランドアイデンティティの研ぎ澄まし方、ビジネスプラン、市場開拓についてのガイダンスや、マーケターやエージェンシーの意思決定層へのプレゼン機会、それらを通じて学んだことを発表する機会などが提供される。

このR/GAというエージェンシーはスタートアップ方面については一歩先を行く動きをしていてIBMの"BlueHub"のようなテクノロジー系スタートアップのインキュベーションプログラム"R/GA Accelerator"をTechstar社と協働で運営しているようです。

このプログラムでは、毎年公募から10社のスタートアップを選出し、各々に5%の株式譲渡を条件に12万ドルを出資。出資したスタートアップには100人で構成される各界のメンターからのアドバイスやレーザーカッターや3Dプリンタなどのデジタルファブリケーション設備があるオフィスの使用権利が提供される。更に、Demo Dayというプレゼン機会があり、そこには投資家や各産業セクターのプロフェッショナル、メディアなどが参加するようです。

そして、このプログラムに参加するスタートアップがカンヌライオンズ2015にエントリーし、早速受賞実績を上げているみたい。

OWLET (Innovation Lions / Gold)

赤ちゃん用のソックス型ウェアラブルデバイス。心拍、酸素レベル、皮膚温度、といったデータをスマートフォンアプリに送信してくれる他、寝返りを行った際に通知する機能もある。新米子育てママにはありがたいデバイスだ。

BioRanger (Innovation Lions / Gold)

害虫や気候などによる農作物被害を防ぐハンドヘルドの検査ツール。作物のDNAを採取し、検査ツールにかけると、約20分程度で作物の健康状態や悪化する兆候がスマートフォンアプリに送信され(今まではこのプロセスに5日かかっていた)、被害が拡散する前に対策をたてることができる。その後、データをクラウドに送信し、隣接する農地のデータと掛け合わせることで、地域全体の兆候が見えてくる、というのが特徴のようです。かなり高度です。

とりあえずイノベーション部門だけ見たのですが、この2作品が受賞していました。他の部門でも何か受賞しているかも知れません。

カンヌライオンズによるこういった新しいチカラの取り込みがある一方で、同じフランスでタクシー組合がAirbnbと並ぶシェアエコノミー・ベンチャーの雄"Uber"を襲撃するというラッダイト運動みたいな事件がありましたが、カンヌでもタクシーのストライキがあり、やむを得ず「ニース空港-カンヌ」をUberのヘリで移動する人が増え(20ユーロでバスもあるけど...広告業界はリッチですね)、通常片道160ユーロの価格が800ユーロに跳ね上がり、最終的には"No Available"になるという事件もあったそうです。

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何かフランスの気風とスタートアップが噛み合わないような気もしますが、2013年に始まったInnovation Lionsと、ソーシャルグッドの精神が融合して大きく発展しそうで、どうやってSXSWとの違いを打ち出すか、来年のカンヌライオンズの楽しみが増えました。また、カンヌライオンズの参加費はSXSWとの単純比較で4倍。スタートアップの参加を獲得するためには参加費の大幅ディスカウントも必要になるのではと思います。

(via Adage)