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Campaign, more than anything

Media Lion Grand Prixは“DELA FUNERAL INSURANCE COMPANY”


グランプリを受賞したオランダの小さな葬儀保険会社“Dela”のことは全く知りませんでした。
Delaは商売上、死者を前にした家族や友人が「あの時、優しい言葉をかければよかった」...的な後悔の言葉ばかりを発することを知っていた。それならば大切な人が生きている内に優しい言葉をかけよう! というのがキャンペーンのコンセプト。
実際に優しい言葉をかける場面を収録した映像を使ったTVCMや白紙の新聞広告を掲出し、大切な人へのメッセージを書いてもらったり、そのメッセージが書かれた新聞をポスターとして活用したり、Micrositeに大切な人へのメッセージをポストしてもらったり、そのメッセージをソーシャルメディアで共有したり...。
日本風に言えば「親孝行、したい時に親は無し」でしょうか。時代が時代だけにこういった“Unite”がテーマとなった作品は強そうです。

その他、会場に展示してあったMedia Lionsのノミネート作品で気になった作品を紹介します。(既に紹介した作品と同じ作品は省きます)
April Fool's Day

ブラジルで91年間の歴史を持つ新聞“FOLHA DE S.PAULO”がエイプリルフールに一面を白紙で発行。読者に一面を解放し、政治的な不満などを記してもらおうという試み。読者と一体化してメディアをつくっていく1つの方法。
Safeguard“How a simple stamp helped prevent disease in the Philipines”

フィリピンでは手を洗わないことが原因で病気にかかる子供が多いが、子供は一向に手洗いをしない。菌が目に見えないからだ。そこで、手にスタンプを押してあげることで、汚れ(=スタンプ)がはっきり認識できる為、子供たちが手を洗うようになり、病気が激減したようだ。
石鹸ブランド自ら利用シーンを開拓する展開。シンプルで力強い。
Colgate“Mouthpiece”

歯磨きチューブのColgateが豪州の人気スポーツチームに協賛。Colgateのロゴ入りマウスピースを選手に配布。パワー系スポーツ特有の必死の形相写真が紙面を飾りやすい競技だけに露出効果は抜群。素晴らしいメディア開発です。
Vodafone“Digital Public Library”


e-Book利用のきっかけとしてe-Book書店風施設を準備。実際の本屋のように陳列された中身のない本にQRコードを設置。スキャンして無料ダウンロードできるサービスを実施した。やはり、何事も順序立てて新しい世界へ誘うべきということですね。
COLCAFE“Wake Up”

多くの人は寝起きはボケている。そして、寝起きのタイプミスは起こりやすい。そこでタイプミスしそうなADWARDを購入し、寝起き覚ましのコーヒーを勧めるWebSiteへ誘導。
この手のターゲットインサイトSnickersも採用していました。朝とか疲れている時など、人間が能力を発揮できないタイミングはチャンスかも知れません。
その他、以前のエントリで紹介したMedia Lionノミネート作品で良いと思う作品。

Mobile Lions Grand Prixは“TXTBKS”(Smart Communications)


Mobile Lionsもいわば「社会派」キャンペーンが制した。底抜けに楽しいコンセプト、というだけではもう受賞できないんでしょうか。
“TXTBKS”なる受賞キャンペーンの舞台はフィリピンで、子供たちがバッグに入れる教科書の量が多いことが原因で重さのあまり身体を痛める子供が多く、問題となっていた。しかし、フィリピンの国民平均所得から言ってタブレットを使った教育は夢のまた夢。あるのは、古びた「ガラケー」のみ...。
ならば「あるもので何とかしよう!」とガラケーを教科書にするアイデアがSmart Communications(携帯キャリア)によって採用された。SIMカードに教科書データを入力し、SIMカードを交換することによって、様々な科目の授業が可能になる。
いわば、ガラケースマートデバイス的に活用する企画だ。新しい何かを開発することも素晴らしいですが、こういった「やりくり」的アプローチも素晴らしいです。

その他、Mobile LionsのShortlistで気になった作品を紹介します。
World Wide Maze

Chromeスマートフォンで遊ぶボール転がしゲーム。任意のウェブサイトを立体迷路化。平面迷路ではなく、エレベータやジャンプまである立体的なステージが生成され、スマートフォンを傾けてコントローラとして使って遊ぶ。
何度見ても良い大好きな作品。これがグランプリでは...と期待したのですが。でも金賞は立派です。
Necomimi

日本らしい可愛いアイデアが良い、お馴染み“Necomimi”も銅賞受賞です。
LEGO Super Heroes Movie Maker

コマ送りでLEGOの写真を撮影して、音楽やテーマを追加することで自作ムービーを作るApps。プロダクトの魅力を拡張させるAppsというのが良いです。
Back to Vinyle


Kontor(レコードレーベル)がBoris Dlugoschなるアーティストのレコード盤を売るべく採用した企画。ターゲットをアナログ盤に郷愁を感じるクリエーティブディレクター(CD)に集中。紙製のプレーヤーにビニール盤を配置し、スマートフォンを「針替わり」にして楽しめるツールをCDにダイレクトで配送した。
アナログ盤=そこそこの年齢=CD限定という思い切りが素敵。
その他、以前のエントリで紹介したMobile Lionsノミネート作品で良いと思う作品です。

Outdoor Lions Grand Prixは“People For Smarter Cities”(IBM)


グランプリは本命決着でIBM“People For Smarter Cities”。
IBMが標榜する‘Smarter Thinking’とはどういうことなのかをわかりやすく提示すると共に、生活者に‘Smarter Thinking’を促し、毎日をより便利に快適にするちょっとしたアイデアを募集...といった企画を含んだ、一目で良いと分かる分かりやすさが素晴らしい「機能する体験型広告」。
例えば、ベンチになる広告。

スロープになる広告。

雨宿りできる広告。


これはダントツで抜けていたと思います。
その他、Outdoor Lionsの展示で気になった作品を紹介します。
Gillette“Take it all off to show off”

単純にエロい。
STIHL“All the muscle you need”


このボケっぷりが好き。逞しく無い人でもパワフルに使える工具。
Allegra

抗アレルギー薬の広告。うまい立体的ポスター。
ABU Dubai Air Expo



鮮やかな紙の使い方!
Huggies“Dad's pregnant too”


妊婦と旦那が特殊ベルトで結ばれ、お腹の中の動きが共有される、かなり粗挽きな企画。というか、これアウトドア?
Power Tools“Cuts Through the Clutter”

これぞアウトドア。ダイナミックなアンビエント!
その他、以前のエントリで紹介したOutdoor Lionsノミネート作品で良いと思う作品です。

Innovation Lions Grand Prixは“Cinder”


Innovation Lionsは今年から導入された部門で、栄えある初代のグランプリは“Cinder”となった。

Cinderとは、画像、音声、動画等を簡単に処理&可視化できる、主にビジュアルデザイン向けの強力なC++ライブラリであり、The Barbarian GroupのAndrew Bell氏が中心となってオープンソースとして開発が進められている。
同様の思想を持つProcessingやopenFrameworksによく似ており、C++で簡単に記述できるうえ、WindowsMacOSXiOS(iPhone/iPad)といった複数のプラットフォームをカバーしている。(Preferred Research)

どんなクリエーティブ表現ができるか...は以下のビデオを参照。

兎に角凄い技術であることは分かりました。
その他、Innovation Lionsのショートリストで気になった作品を紹介します。
Virtual Makeup Mirror

自分の指でヴァーチャルにメイクができる不思議な鏡。色々と試したいけど「塗って落として...」があって思うように試せないのが現実の中、実用性が期待できそうです。
Terra V.I.P.

ブラジルのスラムではネット利用はコミュニティセンターに依存している状態。しかし、省スペースで椅子を並べてコンピュータを操作するのでプライバシーの問題が発生する。例えば、銀行口座情報を覗き見されたり...。
そこで開発されたのがLCDモニターの偏光フィルムを取り除き、専用メガネのレンズ部分装着すると、メガネを通してしかモニターを観ることができない環境ができあがる。
ちょっとしたアイデアかも知れませんが、良いアイデアだなと思いました。
その他、以前のエントリで紹介したInnovation Lionsノミネート作品で良いと思う作品です。