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全ての障害を持つ人々の、障害を越える能力を讃え、全力で偏見に挑む最高のフィルム「We're The Superhumans」

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Superhumans。

英国では障害を持ったアスリートをそう呼んでおります。ロンドン・パラリンピックの放送局であるChannel 4が、オリンピックに比して注目度が低いパラリンピックを盛り上げるべく制作したキャンペーンであり、パラリンピアンの凄まじいフィジカルを描いた映像が印象に残っております。カンヌライオンズでもグランプリを受賞しました。
 
 
そして、リオを目前にした今、Channel 4からリリースされたフィルムがこれ。
We're the Superhuman。今回は、アスリートだけでなく、障害を持つ人全般を讃えるような映像です。
 
 
アスリートを含む障害を持った人たち140人が出演。全ての障害を持つ人々の、障害を越える能力を讃え、チャリティとかじゃなく、全力で偏見に挑んでいるのが最高です。
それから、Channel 4が、パラリンピック以外でも、障害を持ったアスリートの大会を継続的にサポートし続けていることも素晴らしいです。
障害を持ったミュージシャンで構成されたバンド「The Superhumans Band」もいいです。楽曲「Yes, I can」は、iTunesamazon, Spotifyで配信しているみたいです。
 
最近では聴覚障害を持ったNFLプレーヤーにフィーチャーしたDuracellとか、聴覚障害ダンサーにフィーチャーしたSminoffAxe車いすバスケットボールチームにフィーチャーしたGuinnessとか、ブランド広告でも障害を持った人たちをキャスティングする機会が増えておりますが、「恩着せがましい」とか「障害者の視点が欠如している」って声があって、評判については微妙な状況です。ブランドを売り込むという視点が強くなると、どうしても白々しくなってしまうのかもです。
その点、Channel 4は番組を売り込むことが目的なので、障害を持つ方々に全力で寄り添えるのかなと思う次第です。
 
兎に角、いいモノ見せてもらいました。「We're The Superhumans」は、最高のストーリーだと思います。
 

オーストラリアが税金を使って世界を欺くビデオプロジェクトを2年間に渡り展開

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10年程前に、当時バルセロナに在籍していた絶頂期のロナウジーニョが練習で、ボールをグラウンドに落とさず、クロスバーに4回連続で当てるという離れ業動画Nikeにより公開されました。当時、ロナウジーニョは超絶プレイを連発していて「彼ならできる」という人もいれば「あれはフェイクだ」と断定する人もいて、かなりの論争になったことを覚えております。以降、「フェイクか? リアルか?」動画は定番のヴァイラル手段としてクリエーターに愛されてきたわけですが、オーストラリアでは、その手の動画プロジェクトを2年間に渡って、税金を使って展開していたというから、ちょっとびっくりしました。

オーストラリアのプロダクション「Woolshed Company」がリリースした以下の動画によって、これまで不明だったプロジェクトの存在が明らかになりました。

 

 
リリースされた8つのビデオはいずれも「リアルかフェイクか?」論争を巻き起こす類で、「トルネードの前でセルフィするクレージーな男」とか「スノーボードしてたら熊に襲われそうになった」ビデオは、情報番組でかなり取り上げられたと記憶しております。
 
※8本のビデオリスト

まず、自前で「シドニー湾で泳いでいるとサメに遭遇する」ビデオを制作。次に、Roadshow Entertainment(DVD配給会社)との契約により制作した「トルネードの前でセルフィするクレージーな男」で成功し、Screen Australia(オーストラリア国内の映像事業を支援する国家機関)との6本100,000ドルの契約に至ったようです。

結果、動画8本を通じて、180ヶ国で2億500万回以上再生され、50万コメント・160万Like!を記録。「広告」というハードルがなく、純粋にストーリーテリングの技術だけが要求されるプロジェクトとはいえ、凄い数字です。

この手の短編ビデオが、国家の映像事業振興に役立つと考えて投資したこと自体、斬新です。Screen Australiaの担当者曰く「これは短編物語の実験であり、ソーシャルメディアにおけるパワーを知る良い機会になった」と語っております。

1969年「月面着陸」は未だにフェイク映像との噂が絶えないわけですが、宇宙開発におけるアメリカのプレゼンスを高めた事例であり、このフェイク映像技術がオーストラリアに大きな政治的価値をもたらすかも知れないと思う次第です。

 

(via The Guardian)

 
 

東京ドーム990個分の広さを持つ、モンタナの荒野の美術館

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「美術館」で屋外型というと、大抵は整備された庭園・公園という場合が多いのではないかと思いますが、7月3日にモンタナ州ビリングスという町から100km以上離れたフィッシュテイルにオープンした「Tippet Rise Art Center」は、だだっ広い荒野そのものがです。その広さ4,654ヘクタールで、東京ドーム990個分 ! そんな空間にオブジェや野外クラッシックコンサートホール(夏にはコンサートが開催される予定)が点在していて、アートや音楽が楽しめるというわけです。(因みに、センター内の移動は電気自動車を使用)

そんな中でも特に目を惹いたのが「Ensamble Studio」(マドリッド / ボストン)による3つのインスタレーション。かなりスケールがデカいです。メイキングビデオ見る限り、土木工事を駆使してつくられてます。
 

1.Beartooth Portal

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2.Inverted Portal

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3.DOMO

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3つに共通するのは、何か「ストーンヘンジ」みたいな感じで神秘的です。
荒野に溶け込んでいるようで、溶け込んでいない、以前からあるようで、そうではない、その塩梅が絶妙だと思う次第です。
モンタナ州って行ったことないですけど、東から西へ開拓されてきたアメリカの歴史の中で、未だ開拓されていない「残されたフロンティア」というイメージがあって、それ故、この3つの「以前からそこにある感じ」のインスタレーションはビジターを開拓者の気分にさせてくれる効果があるように思います。
 
 

「傷だらけの天使」のショーケンのようにビル屋上の小屋で暮らす~都心のビル屋上を有効活用して居住空間を創出

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傷だらけの天使」を観て以来、ショーケンのようにビル屋上の小屋に暮らすことに憧れ続けておりますが、未だその夢はかなっておりません。そのような物件がない、というのが大きな理由ですが、それも近い将来、ベルリンに移住できれば解決するかも知れません。

 ベルリンはパリ同様、民泊ブームの煽りにより、多くの家主が収益を求めて民泊運用に走ったことで、市内で手頃なアパートを見つけることが非常に困難になっております。この問題解決に向けて、「屋上」に着目したのがSimon Becker(デザイナー)とAndreas Rauch(建築家)の2人。ベルリン市内には活用できていない55,000の屋上があり、そこに"CABIN SPACEY"という名の小屋を設置しようというのが彼らの構想です。

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CABIN SPACEYは広さ約23.2㎡。過剰にモノを所有しない現代の若者2人で住むには十分という広さで、シャワー&キッチンが完備していて、大きな窓があり、ロケーションによっては絶景が楽しめるのが魅力。また、屋根はソーラーパネルで覆われており、小屋で使用する電力は確保できるとのこと(不足の場合はビルから供給を受ける想定)。

現在ベルリン市内のビルオーナーと折衝し、機能・条件・費用などを調整中とのこと。

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この構想はFordがスポンサーとなった「Smart Urban Pioneers」でトップ3に入賞し、現在、プロトタイプ製作に向け、Indigogoで資金調達を実施中です。
 
 
このCabin Spaceyはビルの屋上だけでなく、都会のあらゆる隙間空間に配置することも想定していて、2人は、この構想についてこう語っています。
 
"We want to let Cabin Spacey rain like Tetris on the city and fill all these small spaces."
テトリスのように都市にCabin Spaceyの雨を降らせて、全ての隙間を埋め尽くしたい。

 

テトリス」というのが、イメージ湧きます。イカした比喩です。

何年か前にパリのエッフェル塔付近の美術館"Palais de Tokyo"の屋上に、たった一室だけのホテルを期間限定展開する企画( 最高にロマンティックな1室だけを売るというホテルビジネス )があって、とても印象に残ってるんだけど、やっぱり「屋上」、憧れます。

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東京や大阪のビルの屋上も室外機以外はほとんど何もないし(たぶん)、小屋をつくることができれば、かなり競争力あるんじゃないかと思う次第です。マンションの屋上につくれば入居者のパーティスペースにだってなるし、色々アイデアは膨らみそうです。

(via FAST COMPANY)

 

 

 

アメリカで大人気の個人間送金アプリ「Venmo」をハックして寄付を募るクレバーなやり方

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Venmo。

アメリカのミレニアル世代の間でぐいぐい上昇中の個人間送金アプリです。例えば、学校帰りにカフェに立ち寄って、手持ちのお金がないので友人に借りる、なんてことはよくあることですが、そんな時"Just Venmo Me !"(Venmoで返してくれたらいいよ)って言うそうです。既にGoogleググる)みたいに動詞化してます。

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アメリカでは人にお金を渡すのに、小切手をよく使うのですが、「なんでいちいちこんな面倒なことするんだろう? 小切手を換金するのにわざわざ銀行に行かなきゃならないし」と疑問を持ったことがきっかけだとか。
 
このVenmoを通じて、"Water Is Life"(途上国への水支援を目的とした非営利団体)が若者たちから寄付を募ろう、というのが企みなのですが、このVenmoには広告枠などありませんので、正攻法では寄付は募れません。
 
どうするのか?
 
Venmoには、友人が他の人と行っているお金やメッセージのやり取りを閲覧できるGlobal News Feedという機能があります。誰かが一括で立て替えたお金を仲間に請求して精算するといったケースがあるので、ソーシャル機能が必要になるということです。

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このGlobal News Feedで発見したユーザーにランダムに1cent送金。送金に付随する最大2000字のメッセージ欄を使って、寄付を呼びかけるメッセージを送信します。こんな感じで、文字を詰め込むのではなく、メッセージを把握しやすいデザインです。

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例えば、

「1セントじゃビールだって買えないけど、1セントあれば、必要とする誰かに清潔な水を一日分提供することができるんだよ」

といったメッセージに「Water Is Life」の寄付サイトのURLを添えて送信。(Venmoで寄付の送金はできないのかな? とか思ったりしますが...)
キャンペーンは7月4日(独立記念日)に実施。250メッセージを配信(2.5ドル)し、400ドルの寄付を獲得。その後、1,000メッセージ配信(10ドル)し、800ドルの寄付を獲得しました。勿論、Venmo側には内緒です。
 
 
寄付額が多いか少ないかはわかりませんが、「システムの裏をかく」やり方が気持ちよいと思った次第です。「ハックした!」感、メチャあります。
 
(via ADWEEK)

デザイナーはもうちょっと厚かましいぐらいでいい

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Designers Should Be A Little More Shameless.

デザイナーはもうちょっと厚かましいぐらいでいい。

 

FAST COMPANYによるランチトークイベントで、WORKING NOT WORKING(クリエーターネットワーク会社)のアーティスト兼共同創業者、Justin Gignacが語ったテーマです。
ぱっと見「Shameless」というのは、オーディエンスの気を引くための大袈裟な表現だと思ったけど、彼が「Shameless」だと主張する幾つかのプロジェクトを見ると、なるほどそうあるべき、と思った次第です。
 
「欲しいモノ」のイラストを描いて、それを「欲しいモノ」の実際の値段で売るプロジェクト。例えば、ルンバが欲しいとすると、ルンバのイラストを描いて、349.99ドルで売るという具合。「Shameless」すぎます。

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何か、虫のいいプロジェクトだけど、これがユニセフのプロジェクト「UNICEF GOOD SHIRTS」に昇華するから世の中は何がおこるかわかりません。

 

「WANTS FOR SALE」の考え方を活かし、ユニセフと組んで、アフリカの角地域(エチオピア界隈)救済キャンペーンを展開。例えば、蚊のイラストが描かれたTシャツは18.57ドルで販売され、売上で「蚊避けネット3セット」が寄贈されます。Tシャツは全12種類あり、最も高価なTシャツは300,000ドルで、カーゴフライト利用料として寄付されます。Tシャツ1枚300,000ドルは笑けてきます。
 
 

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81人分のワクチン: 24.30ドル(左)1200個の高カロリービスケット: 49.96ドル(右)

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10家族分の水キット: 125.55ドル(左)コミュニティ用ウォーターポンプ: 500ドル(右)

 

プロジェクトを通じて、385,417ドルの寄付を集めることに成功したそうです。WoW!
 
NYCに落ちているゴミを集め、デザインされたキューブ型パッケージに詰め込み、オンライン販売するShamelessすぎるプロジェクト。50~100ドルで販売されましたが、かなり売れたそうです。日本でも結構話題になりました。

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Limited Editionなるゴミもあります。これは「同性結婚合法化」に沸いたNYCで生まれたゴミ。この他にも「ヤンキースの優勝パレード」「オバマ大統領就任演説(DC)」などがあります。価格はなんと100ドル! 狂ってる!

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その他にもTV番組のために特大キューブをつくったり、コワーキングスペースのインテリアとしてローテーブル型のNew York Garbageをつくったり、多様に展開。
このNYCのゴミは、世界30ヶ国1,300個以上販売しました。ゴミは人にとって邪魔でしかない存在。それが利益を生むわけですから「ブランド」(=NYC)や「デザイン」の価値をよく表しています。
 
 

自分は高校が大阪・新世界の近くで、学校帰りに新世界に行くこともあったんですけど、10円玉を磨いて20円で売ったり、大阪では珍しい雪が降った日に、雪を丸めてボール型にして路上で販売するオッサンがいたことを思い出します。今思うと、やってることはGignacさんに近いです。デザイナーが「Shameless」かどうかは知りませんが、新世界のオッサンが「Shameless」なのは有名な話です。

こうやって見ると、「Shameless」はかなり楽しいです。普段の自分よりも「Shameless」でなければ、単なる良いデザインに慣れた現代では、心を動かすほどの力強さが生まれないということなのかなと思った次第です。

 

(via FAST COMPANY

 

 

 

レインボーカラーのSkittleが白くなった日

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#Brexsitに揺れた先週末の英国ですが、ロンドンではLGBTの祭典「Pride in London Parade」が開催され、BARCLAYS, CITI, VISA, TESCO など、LGBTコミュニティからの支持を狙う一流企業がこぞってサポートしていました。

中でもイカしていたのはSkittle。レインボーカラーでお馴染みのSkittleですが、純白の新聞広告を通じてLGBTコミュニティに対する意識を表明しております。

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このPrideは、たった1つのレインボーだけが注目されるに値する。それはあなたがたのレインボーであり、それが、私たちがこの週末、レインボーであることをやめる理由だ。

ということで、Skittleが白くなりました。何かをレインボーにすることはあっても、レインボーでなくなることは、これまでなかったのではないでしょうか。
こちらは、メッセージの動画版です。
 
 
そして、沿道では白いSkittleが配られ、白いSkittleのビルボードが展開されたそうです。粋なことしますね。Skittleは。