2011年Top10キャンペーン
間もなく2011年も終わりに近づこうとしていますが、今年出会ったキャンペーンの中で個人的に印象に残っている10点を選び、ランキングにしてみました。
#10: Chuck Testa(Ovai Valley Texidermy)
今年の春、全米で一世を風靡したローカルTVCM。Chuck Testaとは、このTVCMの主人公のおじさんの名前であり、動物の剥製師だ。「これって本物? いや、チャック・テスタの仕業さ!」(Nope! Just Chuck Testa!)というフレーズが流行語となり、このTVCMは900万回以上視聴され、数多くのパロディビデオ&写真(Googleで"Chuck Testa"で画像検索すると110万以上ヒット)が創られた。
「おばあちゃんが生き返った!?」「いや、チャック・テスタの仕業さ!」...こういった感じで、キリストが生き返ったとか、ビンラディンが生き返ったとか。また、MC Hammerのヒット曲を組み合わせたビデオも話題になったし、子供リアクションビデオは何本もリリースされた。
カリフォルニアの剥製会社がここまで話題になるとは、これぞソーシャルメディアの醍醐味ですね。
#9: Street Art View(Red Bull)
他のアートと違ってその場に行かないと見れない世界中のストリートアートを“Google Street View”でアーカイブするというプロジェクト。これほどGoogle Mapにピッタリな企画は無いと感じました。
(Street Art Viewの詳しい記事はこちら)
#8: deadmau5 at Nokia Lumia Live
今年は「雨後の筍」の如く3Dプロジェクションマッピングが登場し、画質を追求したモノからライブとの組み合わせやプロジェクションそのものがピンボールやUFOキャッチャーのゲームになるなど、いくつかの発展形が見られたけど、迫力とクールさではこれが一番。人気DJのdeadmau5(デッドマウス)が出演し、高さ120mのビルにリズムに合わせた3D映像が展開される様は壮観です。
(deadmau5 at Nokia Lumia Liveの詳しい記事はこちら)
#7: Quick Cheff Music
目新しい機能が皆無の平凡な「電子レンジ」のコミュニケーション企画を依頼されたエージェンシーがインパクト勝負のTVCMを提案するのではなく、温めたり、解凍している間、音楽が流れる新機能(USB経由で自分の好きな音楽を流せる)を提案したという話。エージェンシーに求められる役割が確実に変化していることを感じました。
(Quick Cheff Musicの詳しい記事はこちら)
#6: Prius Goes Plural
「プリウス」と一口に言っても、ミニバンや小型、プラグインタイプなど種類が様々。そこでPriusの複数形を募集するというキャンペーンが実施された。ご存じのように英単語の複数形は少々複雑で、OctopusはOctopiとも言うし、FootはFeet、しかしFishはFishで、単に「s」をつければいいというものではない。日本語には複数形文化が無いので、日本人が同じアイデアを思い浮かべることは無いけど、複数形文化があるとは言え、こんな狭い所に着目したのが素晴らしい。ちなみに、Prii, Prien, Priuses, Prium, Priusの中から好きな単語に投票する形で実施された結果、“Prii”が選ばれた。
(Prius Goes Pluralの告知関連はこちら、結果発表記事はこちら)
#5: Go Forth(Levi's)
Levi'sが欧州で実施したGo Forthキャンペーンの屋外アート広告の仕掛けがとてもクールだった。「壁を爆破して人の顔を描く」というのがその手法なんだけど、あまりにもダイナミック且つ繊細な表現が忘れられません。
(Go Forthの詳しい記事はこちら)
#4: Coca-Cola Summer Love
「オフラインからオンラインへ」。ユーザーに体験機会を提供し、そのフィーリングを即SNSに展開する仕掛けは、とても重要なコミュニケーションテーマの1つだと思うんだけど、Coca-Cola(イスラエル)は昨年の“Coca-Cola Village”に引き続き、その進化形を披露した。“Facelook”なるFacebookアプリを使った顔認証により自分自身の顔を登録(PCだけでなく、イベント会場に設置されたキオスクスタンドでも登録可能)すると、イスラエル各所で開催されたイベント会場で撮影された写真に自動タグ付けされ、ウォールにポストされるという仕掛けがそれ。少なくともこの分野に限っては来年もイスラエルのCoca-Colaに注目ですね。
(Coca-Cola Summer Loveの詳しい記事はこちら)
#3: The Beauty Of A Second(Montblanc)
Youtubeの登場以来、映像コンペティションってかなり増えたけど、「1秒間」の映像を切り取って投稿するという趣向は初めて見たし、投稿作品からよりすぐりの1秒を60個選んで60秒の至極の映像をつくったり、投稿作品を繋げた作品づくりもでき、「1秒間」からの拡がりが素晴らしい。また、Montblancの美しく優雅なブランドイメージともピッタリだと思いました。
(The Beauty Of A Secondの詳しい記事はこちら)
#2: Hidden Concert(Fred Perry) / AR Cinema
2011年躍進した技術の1つにARがあげられるけど、「これぞARらしい!」と言える企画がこの“Hidden Concert”。街角に表示されたマーカーを読み取ると、そこであたかも「ストリートライブ」が行われているかのような映像が展開される。
もう1つの“AR Cinema”は、街角でスマートフォンやタブレットを翳すと、そこで撮影された映画のシーンが表示されるという趣向。映画やドラマの撮影誘致は地域振興の一環として行われるけど、これならその残像を長期に渡って地域に残しておくことができ、地域ブランディングにも役立つのではないかと思う。それは、ストリートライブも同じで、例えばストリートライブ・イベントをある地域でやったとして、そのコンテンツを長期に渡って活用することができる。日本のモバイルネットワーク環境もこの秋以降急速に高速化しているので、こういった取り組みが近い将来可能になりそうだ。
(Hidden Concertの詳しい記事はこちら、AR Cinemaはこちら)
#1: Escaped Wolves in London(Eristoff Vodk)
狼目撃の怪情報が東ロンドン一帯に流布し、人々を恐怖に陥れるという仕掛けなんだけど、時間の経過と共に、狼とグルジアからやって来た謎のサーカス団がつながり、グルジアのウォッカブランド“Eristoff Vodk”へと収斂されていく物語性、旧ソ連独特のデザイン、ポスターの掲出場所の選択、狼収容を装ったボロボロのバンの活用...など、全ての匙加減が絶妙で、とても印象深かった。
(Escaped Wolves in Londonの詳しい記事はこちら)