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Sadvertising〜泣かせる広告の隆盛


Fast Companyに"The Rise of Sadvertising"という記事が掲載されていた。Sadvertising=Sad+Advertising。泣かせる広告が盛り上がりつつある...という記事だ。"Sadvertising"とはうまいこと言ったものです。"Sad"とありますが、基本的にここで言う涙は悲しみの涙では無く、人を幸せにする涙です。かいつまんで内容を紹介すると...

良い涙は良いソーシャルエンジンになる。エモーションに訴えかけるメッセージは深く刺さり、ポジティブフィードバック率が高く、ブランディングに効果を発揮し、質の高いシェアにつながる。「驚かせてシェアさせる」という方法論と比較して、心に残りやすいみたいなことだと思います(瞬間最大風速的よりもじわじわ心に染みる)。世界一の娯楽イベント「スーパーボール」のCMさえも、Sadvertisingが評価されるようになっている。

個人的な意見として「真実の話か否か」ということが重要であるように思います。全ては広告であり、恣意的に編集されているのですが、真実に感じるかということが重要で、Fast Companyが例示している広告を見る限り、それが地域や人によって随分異なるように思います。まずは、真実を感じる例から紹介します。
P&G"Best Job"
誰もが合意できる母の偉大さについて再認識させてくれたということで、心に染みる物語であり、商品との関わりも自然に感じます。

Google Chrome"Dear Sophie"
親だったら誰だって可愛い我が子に対してこういうことをするし、それをしている時に一番幸福感を感じる筈で、そこにChromeが存在することに嫌みを感じません。

Skype"The Born Friend Family Portrait"
生まれながらにして片腕を失った少女がSkypeで繋がり、互いを励まし合い、ある日ご対面。こういった身体の不自由な方の物語を拝借するのは難易度高いと思うんだけど、これは本当にSkype使って繋がっていたんだろうと思いました。

一方で、真実を感じない例として...
POWERADE"Nico's Story"
生まれながらにして片足の無いNicoが両親の温かい愛に育まれ、スポーツ少年として成長する物語。健常者に混じってハードにプレイする姿は本当に感動的だけど、最後にとってつけたようにPOWERADEが登場。恐らくNicoの成長に関わったわけでは無いのに感動物語だけを拝借して商品を売ろうとするのは許容しがたいです。

Dove"Real Beauty Sketches"
昨年、広告賞で評価の高かったこの広告。サンプルは少ないけど、自分の米国の友人(女子)なんかは、結構感動していたみたい。でも、僕個人としては、これは本当だろうか? 相当都合良く編集していないかって思う。特に自己評価と他人評価の似顔絵が並ぶ最後のシーンは少し気持ち悪さを感じてしまった。

人によって笑いのツボが違うように泣きのツボも違うわけですが、泣きのツボの方が相当狭いような気がします。ただの泣きではなく、「広告としての泣き」がきっと難しそうです。笑わして楽しませて商品を売るよりも泣かせて商品を売る方があざとさ感じます。"Sadvertising"は結構難易度高い戦略のように思います。