Campaign_Otaku

Campaign, more than anything

メディアコストをコンテンツへシフトし、ビッグブランドと勝負


"Newcastle Brown Ale"は英国生まれのビールだけど、現在では米国を主要市場としており、昨年まではTVを使ってキャンペーンを展開してきた。所が米国にはBudweiserやCoorsといった巨大ナショナルブランドが存在しており、彼らが巨額の広告費を投下することから、彼らと同じような手法で勝負しても限界があると判断し、今年から費用の多くをコンテンツ投資に振り向け、ヴァイラルさせることで、BudweiserやCoorsと勝負する方向に舵を切った。
その第一弾が"スーパーボール"のアンブッシュキャンペーン"If We Made It"

"もしNewcastle Brown Aleがスーパーボウルに広告出稿するなら..."というテーマで、架空のキャンペーン映像コンテンツを次々に繰り出し、話題を浚った。
※架空ティザームービー(スーパーボール広告はティザーを用意するケースが多い)

※架空のCMコンテ

※架空のメイキングビデオ(出演者インタビュー)

"スーパーボール"のことを"HUGE MEGA FOOTBAL GAME"と呼び、権利侵害を微妙に避けるこの"架空"キャンペーンが大ヒットし、5,660万インプレッション、116万動画視聴、69,000Like!、16,000シェア、8,000コメント、約600件のメディア掲載により、ブランド認知は5%増、ターゲットの商品購入意向は約20%向上を記録した。
これに気を良くした"Newcastle Brown Ale"は第二弾として独立記念日(7月4日)に焦点を合わせた"If We Won"を展開。(IFつながりですね)

"もし米国独立戦争(1775-1783)で英国が勝利していたら..."というテーマのこのキャンペーンは、英国生まれの"Newcastle Brown Ale"らしいと言えばそうなんですが、米国全体が愛国的ムードに包まれる独立記念日にかなり挑戦的なテーマです。昨年は"Independence Day Eve"キャンペーンを展開。独立記念日に英国のビールを飲んで貰うのは忍びないので、せめてその前日ぐらいは...という謙虚なアプローチだったのですが、その"前日キャンペーン"を残しつつ、今年は大胆な表現を上乗せした。
兎に角、多くの挑発的なビデオをリリースしたんだけど、ここでは幾つかピックアップしてご紹介します。
Stephen Merchant Presents "If We Won"

Stephen Merchant(英国のコメディアン)曰く、米国人が独立記念日を祝うのは"300年間ずっと恋人との別れを花火で祝っているようなもの"。(独立記念日は花火が盛ん)
The USA Would be Great Britain 2

英国が勝利していれば、米国は"Great Britain 2" という名前になっていただろう。
English Muffins

英国が勝利していたら、現在米国で"イングリッシュマフィン"と呼ばれているものが"マフィン"と呼ばれ、700kcalもある米国の"マフィン"は"Bullshit"(牛の糞)と呼ばれているだろう...。
Apology To America From Newcastle And Elizabeth Hurley

このアグレッシブなキャンペーンについて、ソーシャルメディアで色々と批判があったようで、Elizabeth Hurley(英国の女優)が謝罪。ただ、結局は火に油を注いでいますが...。謝罪しない謝罪ビデオという斬新且つ微妙な匙加減を要するアプローチです。
※"If We Won"の全てのビデオはifwewon.comで。
ここからは、"Newcastle Brown Ale"のマーケッターとクリエーティブを担当したDraga5が考えるヴァイラルキャンペーンの成功の法則を紹介します。

1.Limit Paid Support at the Beginning

キャンペーンの立ち上がりは有料広告のサポートを入れないでコンテンツの自走を促し、24-48時間かけて会話が始まるのを待つ。加えて、プレロールを入れるとコンテンツはシェアされづらくなる傾向にあると主張している。何となくわかるような...。

2.Don't Add the Celebs Until You Have the Concept

"Newcastle Brown Ale"のキャンペーンはセレブを起用しているけど、"セレブありき"ではダメ。正しいセレブ起用は注目に繋がるけど、まずアイデアを優先させる。そうでないと、セレブのトーンにキャンペーンを合わせるようになってしまう。

3.But Give Your Talent Some Input

台詞など、固定せずにタレントの言葉や言い方を大切にする。独立記念日のキャンペーンでZachary Quinto(映画「スター・トレック」の若き日のスポック役)を起用。彼はシリアスな感じで有名なんだけど、コメディ風の味を出すことが出来た。
米国の俳優を起用し、商品名を"New Port"に間違えさせるなど、宣伝させられている感たっぷりの雰囲気。この辺りの「米国人には知られていない感」の匙加減が絶妙です。

4.Don't Be Afraid to Anger a Few People

批判的な一部の人の存在を気にしない。独立記念日のキャンペーンは、まさにそういう仕立てだし、Elizabeth Hurleyの謝罪しない謝罪ビデオも面白い。
気にしすぎると何もできないというのは確かにあります。新しいファンを作ったり、ファンのロイヤルティを高めたり...そこに集中するということですね。
(via Adage)