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“Stella Artois”が見せたオープン懸賞の秘技




宇宙旅行や現金1000万円などビッグなプレゼントをフックに生活者の気を惹く効果的な手段として、オープン懸賞は永らく多用されてきたが、最近ではあまりに市場に溢れすぎた為に、相当の秘技を繰り出さねばならないと感じている。
そして、その秘技の1つを“Stella Artois”(英国ビールメーカー / カンヌ映画祭オフィシャルスポンサー)が披露なさっている。タイトルは、“King of Cannes 2010”。
この企画には手の込んだ前ふりがある。何でも“King of Cannes”と呼ばれたプロデューサーにして映画監督であり俳優でもある“Jacques d'Azur”氏が行方不明になったのだが(その後、謎の南の島にいることがわかった)、彼は毎年カンヌ映画祭の時期にカンヌの顔として豪遊していたそうだ。しかし、彼がいない今年は、彼の替わりが必要であり、あまり知られていない後継者(5番目の従兄弟)を捜しているとのこと。ということで「我こそは後継者である」という人は手を挙げてくれ、というのが企画の概略。
ひとしきり「行方不明」のヴァイラルビデオやニュース(上)を流通させた後、後継者を募集開始(オープン懸賞)するわけだが、Facebookを存分に活用なさっている。キャンペーンサイトFacebook Connectを許可すると、ムービーがスタート。どうやら後継者会議の模様。私のFacebookフレンドの写真を見ては、「違う」を繰り返すが、「私の写真」を見るや否や、「キュート! 彼独身?」「素晴らしい笑顔だ!(実際の写真は笑顔ではないが)」と、フランス上流階級の方々からご機嫌なお褒めの言葉を頂く。その後、私の写真が入った家系図が登場する演出などもあり、人を悦に浸らせる極意をよくご存知である。ムービーが終了し、最後に、生年月日やメルアドなどを入力するとエントリー完了。後継者として選ばれると、カンヌ映画祭の週末、カンヌの豪華ホテルに滞在し、ヘリコプターで空を遊覧したり、エクスクルーシブな2つのパーティに出席したり、特等席で映画を拝んだりと“Jacques d'Azur”氏が過ごした贅沢三昧な時間がプレゼントされる。
残念ながら、当選するのは英国在住者だけなので、私のカンヌデビューは無いが、ムービーのクオリティが高く、それだけで充分に楽しめる。私や私のFacebookフレンドの写真が、キレイに映像の中にとけ込み、後から付け足した感がゼロなので、みんなに伝えたくなること請け合いである。
「景品から表現へ」−オープン懸賞も時代の変わり目なのだと思ふ。
ちなみに、私(及び友達)が出演するビデオは、こちら(アルコールメーカーの為、生年月日入力が必要)。


このムービーを見て、最近ある人から教えて頂いた“Hero”という企画に酷似していると感じた。“Hero”は、世界が尊敬すべきヒーローを発表する記者発表で「私」が選ばれるという夢のようなストーリーで、ストックホルムの“DRAFT FCB”というエージェンシーがケイパビリティを示す為に実施した企画(公共放送の料金徴収に関する広告が若干含まれている模様)。実際に8週間で1400万ユニークユーザーを達成したという。“King of Cannes”同様写真の収まりがあまりに素晴らしく、非常にリアル。
私のHeroビデオは、こちら