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「フラッシュモブ」「ことを起こして、拡げて、TVCMにする」


T-Mobile(ケータイキャリア)の“Dance”がBTAA(British Television Advertising Awards)のBest TVCMを受賞。昨年のカンヌ以来、あらゆる広告賞を総なめにしてきたこのプロジェクトが実行されたのは約1年前。リバプールストリート駅でゲリラマーケティングとして展開したフラッシュモブの映像素材をヴァイラルビデオとしてリリースし、その後TVCMにするというキム・ヨナ並のコンビネーション企画だ。あまりにパワフルなフラッシュモブと懐かしの音楽、次々と巻き込まれる老若男女の姿に、当時かなりの衝撃を受けたと記憶しているし、「ゲリラ、ヴァイラルビデオと来てTVCMへ」という手順も面白かった。また、“Life's for Sharing(人生、喜びも悲しみも分かち合おうよ)”というタグラインにもマッチしていたし、Youtubeでの視聴数もぐんぐん伸び、Youtubeだけで1800万を超える空前の大ヒットになった。

しかし、実際もっと驚いたのはT-Mobileの次の一手で“Sing Along”。ロンドンのトラファルガー広場に13,000人以上が集まり、シンガー“Pink”が中心になり、全員でカラオケを楽しむという超絶の企画。これも、ゲリラ→ヴァイラルビデオ→TVCMという手順を踏襲。更に、その他の都市でも小規模な“Sing Along”を展開するという更なる拡がりも見せた。
このT-Mobileの一連の企画は「フラッシュモブ」「ことを起こして、拡げて、TVCMにする」というちょっとしたトレンド(勿論以前からあった手法ではあるが)を作り、その後、そういったコミュニケーションが散見されるようになった。
「ことを起こして、拡げて、TVCMにする」というのはSonyToshiba,Tropicanaなど、最近でも有効な手法として実証されているが、「フラッシュモブ」の方は、オプラ・ウィンフリー(セレブ)の番組が24年目に突入したのを記念して昨年秋にシカゴで行われたBlack Eyed Peasのライブイベント以来、目立ったものは目にしていない(というか、どれを観ても今ひとつに映ってしまう)。

このイベントでは、実に800人のオプラファンがフラッシュモブ(この日の為にオプラに内緒で練習)を展開し、20,000人以上と言われる全来場者を巻き込むことに成功した空前にして絶後の「メガ」フラッシュモブだったのだが、こんな規模のものが出現すると、もはや全ての「フラッシュモブ」が陳腐に見えてしまう。今後は「フラッシュモブ」の傍流を巡る争いになるか、あるいは、それ自体がしばらく影を潜めるか、どちらかだろうと予想。