Campaign_Otaku

Campaign, more than anything

JUST DO IT. を粉々に砕くNIKEの絶品オリンピックCM。しかし、開会式中継番組の放送フォーマットが大不評を買って台無しに。

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4mのフェンスと銃を持った兵士で住宅街から隔離されたスタジアムで平和と多様性を訴えかける盛大で矛盾をはらんだ開会式が終了いたしました。リオ・東京ともに問題が多すぎてオリンピックの意義がよくわからなくなってきております。

アメリカで放送された中継番組では、Gillette,Samsung, Powerade, Apple, Honda, Walmartなどが、それぞれチカラのこもったコマーシャルをオンエアしたのですが、私個人としては、NIKEに魅せられました。
 
 
Unlimited You
「限界に挑む」ことがテーマだけど悲壮感がなく、Oscar Isaac(スターウォーズ俳優)のボイスオーバーと共に、愉快でリズミカルに展開していくのが気持ちいいです。
 
上手くプレーできない初心者テニスプレーヤーやゴルファー、そしてNBAを夢見る赤ん坊のオヤジのアシストつきダンク。でも、彼らは永遠の初心者でない !
All of these athletes are terrible now, but they'll all do big things one day.
そして、女子サッカーの場面では鮮やかなドリブル&シュートに興奮。限界に挑めば可能性が開け、ハッピーになれる !
When everyone pushes their limit they reach their maximum potential and live happily ever after!
そして、体操・吊り輪。完璧な「Lフォーメーション」が決まったところで、"Hey, hey, I'm not done!" と叫びながら回転し「JUST DO IT.」を粉々に打ち破る。破片が審判員にも降りかかっているのが印象的で、凄い技が決まるときの衝撃って、こんな感じなのかも知れません。前半のハイライトです。

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その後は限界に挑むトップアスリートが次々登場。
セリーナ・ウィリアムズとスタントン(MLB)のテニスvsバッティング対決、クラッシュテストからのダンクやフェンシングvs刀剣対決などなど、奇想天外なチャレンジが続き、そして、Oscar Isaacが再び叫ぶ。「誰だって、ずっと先に行けるんだ」。

Everybody is going way too far!

そして、最後は(恐らく)サンフランシスコの急な坂道をスケボーで滑り下りようとするちびっ子。制止するIsaacを振り切って言ってしまう。日本でオンエアしたら、モンスターたちからクレームが来そうなラストです。
 
絶品のクリエーティブだと思いました。きっと視聴者の評価も高いだろうと思ったのですが、中継番組を放送したNBCのフォーマットが多大なる不評を買っております。
 放送権料を回収しようと思うあまり、CМブレークが多すぎて視聴者をイライラさせた挙句、1時間のディレイ放送だったために、テレビ画面とソーシャル上のギャップが大きく、ソーシャルテレビ視聴者を大混乱させるという事態になりました。
 
広告主にとっては激痛です。ただでさえ、ストリーミングに押されているのにブレークが多いというのは辛すぎます。良いコンテンツ(開会式)と良い広告が揃っただけに残念に思う次第です。

さようなら、NIKE GOLF。ゴルフのイメージを変えた伝説的コマーシャル。

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NIKE、ゴルフ事業から撤退。(用具のみ撤退で、アパレルは継続)

撤退理由は「ゴルフ人口減少」「ミレニアル世代がゴルフに関心がなく、好転する見込みがない」とのことです。ゴルフといえばタイガー・ウッズですが、彼の活躍と共にゴルフ人気が上昇し、彼と共に下降、そして、そのタイガーに大きく依存していたNIKE GOLFが撤退というのも不可避であるように思います。
 
撤退はとても残念ではありますが、NIKE がゴルフのイメージを変えた功績は大きいです。個人的にはゴルフっておじさんの娯楽的イメージが強かったんですけど、それがスポーツであること、クールな競技であることを数々のコマーシャルを通して印象づけたように記憶してます。
 
Ripple
タイガーを見て育ったマキロイ。最後は2人がティーグラウンドに並び立つ。
 
 
Enjoy the Chase
マキロイのハードワークと節制。並の努力じゃ世界一はつかめない。
 
 
No Cup is Safe
タイガーとマキロイ、両雄の技術の粋をつくしたユーモア。
 
 
Lifting
タイガーの技。痺れます。
 
 
用具メーカーなど、他のゴルフ関連コマーシャルとは一線を画しています。アパレルだけになってもコマーシャルは続けて欲しいと思う次第ですが、どうなんでしょうか。

NIKEの伝説的キャンペーンのクリエーターがadidasのキャンペーンを制作すると結構似た感じになった。かっこいいのは変わりないですけど。

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blah blah blah

欧州フットボールシーズンを目前に控え、adidasが繰り出したキャンペーンなんですけど、フレーズがイカしてます。
 
 
blah blah blahって、話の中の重要じゃない部分を省略して伝える時に使ったり、「うるさいこと」「つまらないこと」みたいな意味があるので、「深く考えないで、批判や皮肉を大量に浴びせかけるファンやメディアを俺のプレーで黙らせてやる ! 」みたいな意味かなと想像します。このフレーズ、かなり気に入りました。
 
基本は前回のキャンペーン「There Will Be Haters!」(憎まれるほど強くなれーこれもかなり刺激的です)を踏襲しています。小生意気な感じとか、実写とアニメの合成など、表現手法も同じです。
 
 
この一連のクリエーティブ、とてもイカしていて「adidas 垢抜けたな」って感じたのですが、一方で、何年か前の「NIKE FOOTBALL」に似ているなぁと思ったら、案の定、2014W杯南アフリカ大会に向けた伝説的キャンペーン「Write the Future」のシナリオライターが「blah blah blah」や「There Will Be Haters」のECDとのことです。
 
 
何となく両社の勢いを物語っているようにも思う次第です。逆は考えづらいです。
 
(via Creative Review

JRによるリオでのインスタレーションが伝えるリオの光と影

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開幕直前にして、依然「いよいよ感」がない五輪ですが、「JR」の2つの3Dインスタレーションで気分があがってきました。JRは長年、世界中で個人をアートに転換するプロジェクト"Inside Out "を展開中ですが、この2つもその一環とのことです。
 
1つ目は内戦の渦中にあるスーダンのハイジャンパー、Mohamed Younes Idriss(現在はケルンを拠点に活動)が高層アパートを跳び越えるかのような作品。Idrissは、残念ながら五輪出場を果たせなかったんですが、「ここにいるよ !」って感じでしょうか。

布に写真をプリントして足場に固定するという方法が新しいそうですが、この足場を見れば作品のスケールがいかに大きいかわかります。

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写真を見る限り、高層アパートといっても、落書きだらけで廃墟っぽいです。想像するに、バブルが弾けて完成できずに放置されたアパートではないかと。JRとしては、宴の裏側にある負の側面にも注目を集めようという試みではないかと思います。

 

2つ目は、ダイバーが今にも海に飛び込もうかという作品。誰がモチーフになっているかは不明です。 

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もっといろんな角度の写真が欲しいところですが、このインスタレーションが設置されているBarraの海は汚染されており、その海に選手が飛び込まなければならないことを揶揄しているのではないかと想像します。

 

そんな中、3つ目のプロジェクトも進行中みたいです。リオのスラム「ファベーラ」のトップにあるカルチャーハウス"Casa Amarela"に「月」をつくる、とのこと。

 

 
リオデジャルイロは光と影のコントラストが強すぎます。東京はそうならないことを願う次第です。
 
(via designboom

これが人間が進化すべき姿。ダーウィンも納得するかもしれない、交通事故に対応する人間の肉体的進化説

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この醜い姿をした男の名は「Graham」。

Grahamが、SF映画に登場しそうな醜い怪獣だと思う人はいても、「人が進化すべき姿」であると思う人は皆無だと思います。しかし、これは空想とはいえ、実際に綿密なシミュレーションの末にデザインされた「人が進化すべき姿」です。
 
 
本格的なモータリゼーションが始まった約100年前以来、交通事故を減らすために自動車や道路は著しい進化を遂げてきました。一方、その間人間は肉体的に進化していません。Grahamとは交通事故に耐えうる機能を持った進化した人の姿というわけです。
 
 
例えば、事故の最中、頭の動きが止まっていたとしても、頭蓋骨の中で脳が動き、損傷につながるわけで、それを避けるための、「平べったくて幅広で、額が飛び出た頭部」ということだそうです。気になる「たくさんの乳首」なども含めて各部の構造と機能が、特設サイト"Meet Graham"に記されています。

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GrahamをつくりあげたのはTAC(豪州ビクトリア州交通事故委員会)、Clemenger BBDO、Patricia Piccinini(アーティスト)。素材はシリコン、グラスファイバー、樹脂、人毛。Grahamは、いわば交通安全キャラクターであり、ゾッとするような人の進化の必要性を通じて、運転態度について見直すきっかけをつくろうというわけです。
 
交通事故に対して、人が肉体的進化で対応するという発想、凄まじいです。
ダーウィン自然淘汰と突然変異の考え方って、数百万年もの世代交代の中で変化が起こるわけですが、自動車や道路の更なる進化がなく、交通事故が高水準で続く前提ならば、数100万年後の人の姿がGrahamのようになってもおかしくないと思う次第です。
自動運転カーに期待です。
 

キャンバスをつくって何でも配置できる柔軟性のあるデザインシステム「Flexible Framing Device」がとても興味深いです。

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イギリスに「Ravensbourne College of Design and Communication」というデザイン系カレッジがあるんですが、今後、総合大学(University)を目指すということで、ネーミングを「Ravensbourne」とシンプルにすると共に、VIを敢行。

その際に採用された「Flexible Framing Device」という柔軟性のあるデザインシステがとても面白いと感じた次第です。

 

 
キャンバスのようなフレームをつくって、その左上隅に「Ravensbourne」の「R」を配置しつつ、例えば、生徒の作品を配置したり。

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高校生や親へのメッセージから日常的なリアクションっぽいイメージも柔軟に展開。

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フレームを変形させてサインに使ったり、学内誌や広告へも展開。

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この「Flexible Framing Device」というシステム、実は前例があるようで、LGBTを支援する非営利団体「Frameline」のVIがそれ。Framelineというネーミングから発想されたみたいです。
レミングの左手の法則っぽいポーズがシステムを端的に表現しています。

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これが基本形。

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そして、以下のように展開。

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「Ravensbourne」のVIはロンドンのデザインオフィス「NB」、「Frameline」はサンフランシスコの「Mucho」と、異なるプロダクションが担当。
ネーミング的に「Frameline」の方がしっくり感はあるのですが、「Ravensbourne」の方も十分機能的で、さらにフレームの形にまで柔軟性を持たせている点で進化を感じる次第です。いい仕事です。デザインがどのように前進しているのか、ほんの少しだけわかりました。
 

人工知能弁護士

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ピンチは大抵不意にやってきて、その瞬間、適切な対応が求められるけど、知識がないために悪い結果につながることが多くあります。そして、そんな知識を適切に提供してくれる相棒としてAIが期待されているわけですが、DoNotPayというAIを駆使した駐車違反アドバイス・アプリがアメリカで話題になっているそうです。

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日本ではあまりピンときませんが、アメリカやイギリスでは不当な駐車違反切符を切られることがよくあるそうです。開発者であるJoshua Browderは、ロンドン界隈で30回以上駐禁切符を切られたことが引き金となり、DoNotPayを開発。「交通違反で罰金を受ける人は、ほとんどが社会の弱者。故意に法を破ろうとしていないのに、警察の収入源として利用されている」と語っています...マジですか。
 
駐車違反の際にはいくつか確認する項目があるらしく、切符を切られた時に、DoNotPayを立ち上げると、チャットアプリ風に確認事項が投げかけられます。例えば「標識はしっかり見えていたか」「周りに駐車スペースは十分に作られているか」といった内容で、ユーザーからのリプライを分析し、過去の類似事例など、異議申請に役立つ情報が即座に提示されたり、異議申請書類が完成するという仕組みです。
 
 
DoNotPayは21ヶ月でロンドンとNYCで1600万ドルの取り消しに成功。今秋にはシアトルで導入予定です。また、DoNotPayには「4時間以上遅延した航空券の補償」や「HIV患者の法的権利サポート」機能も搭載されており、現在は「シリア難民申請サポート」機能も開発中とのことです。
 
イギリスやアメリカは警察権力の乱用があるとはいえ、世界にはもっと酷い国があるので、そういう国の法律に対応した機能が上乗せされれば、世界がもっと良くなると思います。いい仕事です。
逆に日本ではあまり需要ないかと思います。痴漢の疑いをかけられた時に、弁護士に電話でき、アドバイスがもらえるという「痴漢冤罪保険」(月額590円)がありますが、アプリにするほどではないかなと思う次第です。